韓国における「慰安婦」     加瀬英明     「史実を世界に発信する会」代表  橋下大阪市長の「慰安婦」をめぐる発言が、内外で大きな波紋をつくった。  いつものように、韓国の反日世論が涌き立った。  ことあるごとに、日本に悪態をついて快感に浸たる。なぜ、韓国はこのようにいじけているのかと思う。  だが、困ったことに、アメリカでも日本の慰安婦問題となると、中国、韓国の多年にわたる工作によって、日本が先の大戦中に無辜のアジア女性を拉致して、軍の「性(セックス)奴隷(・スレイブ)」となるのを強いたと、ひろく信じられている。  河野官房長官による慰安婦についての談話、日本が前大戦に当たってアジアを侵略したという村山首相談話を否定することには、アメリカの国内世論から強い反発を招くことになるので、オバマ政権も日本のなかでそのような動きがあることに、反撥している。  日本の官憲が人攫いのように、女性の意志に抗って慰安婦となることを強制したようなことは、ありえない。  慰安婦であれ、前大戦で侵略を働いたというのであれ、南京事件であれ、事実無根であるが、民主主義国で一国の政府がまったく虚偽の事実を、公的に認めるような奇想天外なことは、ありえないことだ。そのうえ、謝罪している。全世界が事実だと信じ込んでいるのも、当然だ。  それだけに、河野、村山談話の罪は重い。日本が国家の安全を守るのに当たって、日本の汚名を清ぐのを急がねばならない。日本の名誉を回復することが、日本の価値を高め、日本外交に力を与えることになる。  どの国であっても、軍隊が外地で戦う場合には、将兵が性病にかかることがないように、兵士の性欲の処理にかかわって、管理するものだ。日本軍も例外ではなかった。日本軍の場合には、売春宿を経営する業者に女性を募らせて、慰安所を設けた。  いったい、韓国には、軍人のための慰安婦がいなかったのだろうか?  私は日韓国交樹立の前年に、韓国をジャーナリストとして訪れてから、足繁く通ったが、『東亜(ドンア)日報(イルボ)』をはじめとする韓国の主要新聞に、米軍のための「慰安婦(ウイアンプ)」を募集する広告を、よく目にした。「慰安婦」という言葉は、旧日本時代から引き継いでいた。  韓国における「慰安婦」について、韓国の学者グループによる研究があるが、二年前に『軍隊と性暴力』(現代史料出版)(注1)として訳出刊行された。  同書は、「慰安婦」が朝鮮戦争の勃発から、国連軍(米軍)と韓国政府がかかわって管理されたことが、克明に検証している。  韓国では、米兵相手の「慰安婦」を、「洋(ヤン)公(ゴン)主(ジユ)」(外人向け王女)、「洋(ヤン)ガルボ」(外人向け売春婦)、「国連(ユーエヌ)婦人(マダム)」、「国連(ミセス・)婦人(ユーエヌ)」と呼んでいたという。米軍向けの売春地区は、「基地(キジ)村(チヨン)」と呼ばれた。  「慰安婦」の「目的は、第一に一般女性を保護するため、第二に韓国政府から米軍兵士に感謝の意を示すため、第三に兵士の士気高揚」のためと、述べている。  韓国軍にも、慰安婦がいた。「『慰安婦』として働くことになった女性たちは、『自発的動機』がほとんどなかった。」「ある日、韓国軍情報機関員たちにより拉致され、一日で韓国軍『慰安婦』へと転落した。」  「国家の立場からみれば公娼であっても、女性たちの立場からみれば、韓国軍『慰安婦』制度はあくまでも軍による性奴隷制度であり、女性自身は性(ソン)奴隷(ノーエ)であった」と、論じている。  二〇〇二年に韓国陸軍の「慰安婦」についての研究が発表された直後に、「韓国の国防部資料室にあった韓国軍『慰安婦』関連資料の閲覧が禁止された。(略)『日本軍「慰安婦」問題でもないのに‥‥』と言葉を濁らせた」という。  ソウルの国会と、アメリカ大使館前にも、慰安婦像を設置することになるのだろうか。    (注1)  『軍隊と性暴力―朝鮮半島の20世紀』 (宋玉連・金栄編著)(現代資料出版/東京/2010年)