著者は1938年台湾生れの高名な評論家。「「満州」(東北)が古来、中国の「絶対不可分の固有領土」だという主張は、中国政府が二〇世紀に入って初めて主張したものである。」、「史実を見れば、中国と不可分だというより、有史以来満州は中国と万里の長城を境に、相容れない二つの世界であった。・・・文化的・政治的に対立・対峙し続けてきた異なる文化圏であった。」、「満州国を日本の植民地、傀儡国家だと見なすのは、明らかに建国の背景を無視した結果であり、歴史の歪曲である。」、「二〇世紀に入っても、新たに開拓する土地であり、日本の租借地であった関東州と満鉄所属地以外、近代産業らしいものもなかった。」、「しかし、満州国建国後十三年半にして、そこは北東アジアの重工業の中心地となり、自動車や飛行機まで作られる一大近代産業国家にまで成長した。それは人類史上、奇跡としか言いようがない。」、「日本人の開国維新以来のすべての情熱と技術の粋をそそぎ込んだ結晶といってよいし、日本人は誇りに思わなければならない。」、「戦後の満州は中国の重工業生産の九割を占めた。」、「中華人民共和国を支えてきたのは、満州国の遺産であった。」、「満州国の遺産を食いつぶしたのち始められたのが、新しい路線転換である改革開放路線である。」(“はじめに”より)
本書で著者は丁寧にシナや満州の歴史をたどりながら、満州国の建国に至る経緯、満州国の実情、終焉、残された膨大な遺産について解説している。満州国発展の中心にいた日本の建設的で優しい文化と、戦争のドサクサに紛れて略奪することしか頭にないシナや(旧)ソ連の文化との違いが際立っている。戦後のさまざまに歪曲された“史実”にまどわされることなく、満州国の真実を知る上で有用な書。
註:同じ著者の“「満州国は日本の植民地ではなかった」ワックBUNKO、2005年9月発行、¥930(税込み)”は英訳されている(掲載文献参照)。
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