著者は1958年、台湾台中市生まれの医師。1987年に来日、東京大学医学部博士課程終了(医学博士)。台湾独立建国聯盟などで活動。
「中国ガン」とは変わった書名であるが、生物学の視点で見れば、共産中国は地球人類にとってガンのようなものだという意味である。「譲り合いの精神」などカケラもなく、「俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの」という性格で際限なく自己拡大を図ろうとするのは、ガンと中国とに共通しているという。「法」は権力者により「搾取の道具」として使われ、公権力と企業経営者が結託して金銭的利益のみを追求して環境を破壊し続け、組織的かつ国家的犯罪が蔓延して、富者が貧者から財産を掠奪して貧富の差を拡大し続けている。高官たちだけでなく、機会さえあれば多くの国民は中国を捨てて外国へ移住したがっている。これは、韓国・朝鮮同様、中国人には近代国家を統治していく能力が無いことを証明している。すでに移民、留学、投資、密入国など、さまざまな方法を使って中国のガン細胞は世界中に散らばり、移転先の国々でさまざまな問題を起こしている。これは単に共産党一党独裁により生み出された傾向というより、シナ三千年の性癖であるから、世界は一刻も早く対策を講じるしかないと著者はいう。
その対策としては、外科手術のようなガン細胞を殲滅する方法が取れない以上、病気のガンに対する免疫療法のような、ガン細胞を無力化する方法しかないというのが著者の見解である。現に免疫療法のNKリンパ球のような存在が中国内外に存在していると著者は分析している。すなわち、①法輪功(組織の形はないが、すでにさまざまなメディアを運営している)、②天安門事件の関係者と被害者(「天安門の母」運動などがある)、③地下教会(政府が宗教を弾圧しているから、地下教会の信徒が増加している)、④反抗するエリート層(官僚や知識人の中にも異議分子が存在している)、⑤海外の民主運動家(中国共産党に迫害されて亡命生活をしている民主運動家)、⑥香港(中国の真実の情報に触れられる香港人の対中国嫌悪感)、⑦ウイグル、モンゴル、チベットなどの圧迫されている民族(民族絶滅の危機にある三民族の抵抗運動)である。
著者の中国ガン無力化の戦略は、こうしたNKリンパ球のような存在を世界、特に日本が台湾と共同して支援して、中国を解体、または分割に向わせるのが最も効果があるというものである。そのための処方箋として著者は、次の五つを提唱している。
① 中国に「民主化」を求める
② 中国に「言論の自由」を求める
③ 中国に「環境問題の解決」を求める
④ 日本が「中国人権法」を制定する
⑤ 日本が「日本版台湾関係法」を制定する
多くの配慮をしても人間の善意が通じない中国に対して、日本は国益や人類益を考えてもっと毅然とした政策を実施することを著者は主張している。