著者は1973年生れ。東京大学文学部卒業、東進ハイスクール講師。
本書は東京大学の日本史の入学試験問題に解説を加えて一般書にしたものであり、内容は古代から現代にまで亘っている。さすがに「大学の<顔>としての入試問題」だけあって、疑問な箇所を中心に日本史全体を理解し、深く考察する上で有用な書物である。
「東京大学の日本史の入試問題・・は、人名や年号の知識を問う空欄問題・正誤問題などの出題はいっさいなく、論述問題のみで構成されている」、「「東大日本史」の面白さを一言で言えば、自明に思える歴史の見方・考え方に揺さぶりをかけられる、ということにあります」(“はじめに”より)。
「東京大学ほど「優秀な学生を集める」ということに意識的な大学はありません。東京大学の入試問題は、日本史にかぎらず、緻密な思考力を問う良問が選りすぐられています」(“はじめに”より)。「東大入試の本質は<暗記>である(ほかの科目も含めて)・・・「考える前に覚えろよ」という当然のことを、東大の先生方もお考えなのだと入試問題から感じます」(2の“はじめに”より)。「<意味>はあとからわかる。だからこそ、「考える前に覚えろよ」なのです」(2の“おわりに”より)。
ちなみに、現在の東京大学の入学試験は多様化しており、第2次学力試験に日本史を含む社会科が課せられているのは文科系分野だけである(昭和40年ころまでは、文科系、理科系分野ともに五教科・七科目が課せられていたが、現在では文科系には理科が、理科系には社会科が第2次学力試験の入試科目から除かれている。入学試験が高校以下の学生に試験対策の時間を取らせる以上、優秀で多様な学生を集めるのであれば、入試科目はもっと少なくても良いのではないか)。