著者は1962年東京生まれのコラムニスト・映画評論家。早稲田大学法学部卒業。カリフォルニア州バークレー在住。
良かれ悪しかれ、現代の日本と日本人にとってはアメリカとの関係を抜きにしては生存が難しいのが現実であるが、それにしては多くの日本人がアメリカの実像を正確に理解しているとは言いがたい。新聞やTVも日米同盟に遠慮してか、アメリカの暗部を伝えるのに消極的である。もともとヨーロッパ白人社会のはみ出し者や落ちこぼれが流れてきて大恩ある先住民をだましては虐殺を繰り返し、戦争に継ぐ戦争を繰り返して太平洋までをも暴力(武力)で奪い取ってできた国がアメリカ合衆国である。そうした建国の歴史を考えれば、文化度や民度がさして高くないことは容易に想像できるが、第二次世界大戦での敗戦のショックか、現代日本人のアメリカを見る眼は相当に曇っている。アメリカ在住の著者は、2000年代のアメリカの素顔を何とか日本人に伝えようと、本書で奮闘している。
タイトルにある「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」というのは実話である。というよりも、多くのアメリカ人にとってそんなことはどうでも良いことで、特に関心が無いのである。ましてや、世界のことなどまったく関心が無いという人たちがアメリカには山ほど居る。言い換えれば、自分の住んでいる地域だけに関心を向けていれば生きていけるともいえる。アメリカという国は、巨大な田舎者の集団なのだ。
本書は、日本人にアメリカという国の実態を知る上で多くの示唆を与えてくれるものと思う。ぜひ一読をお勧めする。
「日本人が知らなかったアメリカの謎」村尾英俊著、中経出版、2013年1月発行、¥619+税、も、アメリカの実像を知る上で参考になります。この書は主として経済や政治についての実像を追求しています。