一、 尖閣問題に対する菅内閣の対応、中でも仙谷官房長官の言動に対しては国民の憤りが沸騰している。しかしこれを「弱腰」あるいは仙谷流表現の「柳腰」と見るのは、全く見当はずれである。ビデオ公開を執拗に阻止してきたのは、「弱腰」のせいではない。ビデオの内容は日本の国家にとって何ら不利なものを含んでおらず、むしろ日本国家に極めて有利な内容である。したがってこれが日本の「国家機密」であるはずはない。しかし、中国にとっては決定的に不利な内容であり、いわば中国にとっての「国家機密」ともいうべき内容である。となると仙谷は中国の国家機密を守るために極めて「強腰」な態度を取っていたという事になる。中国の為に、すなわち「中国のイヌ」として「強腰」を貫いてきたと知れば、彼の一連の言動は極めて理解しやすいものとなる。
二、 では、仙谷は中国から金をもらっているのか、という人がいるかもしれない。通常は売国奴は敵国から金で買収されていることが多いからである。しかし「イヌ」になるのにもう一つのケースがある。歴史的に恩義をうけた中国に一方的に侵略し被害を与えたのが軍国主義日本であり、日本はその償いを徹底的に行わなければならない、と信じ込んでいる思想的な理由によるものである。さらに「自衛隊暴力装置」発言にみられるように、共産主義思想に深く影響を受けている仙谷にとって、共産中国は今では大変質を遂げているのだが依然として心の中では神聖な存在なのであろう。日本国政府の官房長官であるにもかかわらず、この中国の立場に立って船長を釈放し、ビデオ公開を阻んだことは、客観的に見れば「中国のイヌ」となり売国行為を行ったとしか言えないのであるが、ご本人は信条に従い、「よいこと」を行ったと思っているのであろう。であるからこそあの居丈高な発言と強硬策を続けているのであろう。
三、 げに恐ろしきものは誤った歴史観、思想である。日中戦争は中国が起こした、日本は望まない戦争に引き込まれた、というのが歴史の真相である。それをまとめた小論文を「史実を世界に発信する会」サイトに英訳して掲載しているが、その日本語版冊子を仙谷にも送っておいた。日中本格戦争の開始である上海事変は「一方的に中国が起こし、日本は望まぬ戦争に引き込まれた」と当時どちらかといえば、親中反日的であった「ニューヨーク・タイムス」が報じている。その記事を論文の冒頭に引用しておいた。これを読んでも「おや」とも思わなかったのだろうか。まともに読めば歴史観がガタガタに瓦解するような事実が続出する本冊子を読み続けるような良心はないのであろう。今度はより本格的な日中戦争論『日中戦争―戦争を望んだ中国、望まなかった日本』(北村稔・林思雲著)(PHP)の英訳版を「発信する会」のサイトに近々アップする。幻の虚構の上に組み立てられた日中戦争の歴史観に対する大鉄槌となるであろう。追撃戦を徹底的に行っていくことが大事であると考えている。
(10.11)