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「「太平洋戦争」は無謀な戦争だったのか」ジェームズ・B・ウッド著、茂木弘道訳・註、ワック、2009年12月発行、¥1,600+税
著者は米国の大学教授(歴史家)。訳者は1941年、東京都生れ(「史実を発信する会」事務局長)。本書は、軍事史に興味を持ち関連著書もある米国人である著者が、「日本は「太平洋戦争」の戦い方を誤った」ということを数多くの資料から解説・証明している試み。訳者は、英語圏の著者が採用することのできた資料の偏りから来る誤解を、一つ一つ丁寧に「訳者注」として訂正・解説している。
“そもそも大東亜戦争に対する日本の基本戦略は、東南アジアの資源地帯から米英蘭勢力を駆逐した後は、対米、すなわち太平洋は防御、攻勢の主方向は、インド洋と中国であった。開戦直前の昭和十六年十一月十五日の大本営政府連絡会議で採択された「対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」にはこのことが明記されている。この基本戦略通りに戦ったならば、日本が負けることにはなりえなかったと思われる。・・・英を脱落させ、中を脱落させ、米をして戦争継続の意欲を喪失せしめる、という極めてまともな勝利を目指しているのである。”、“「戦力は根拠地から戦場への距離の二乗に反比例する」というよく知られた戦いの原則からすると、たとえアメリカが日本の十倍の戦力を持っていたと仮定しても、戦場の選び方によっては・・・日本は圧倒的に優位な戦力と化すのである”(訳者まえがきより)
その基本戦略に反する戦いを始めたのは、海軍の山本五十六連合艦隊司令長官であった。「真珠湾攻撃は海軍軍令部が猛反対したにもかかわらず、最後には、山本提督が作戦前夜に連合艦隊司令長官辞任の意向をちらつかせることによって自説を押し通した」(第1章より)。さらに山本提督と彼の参謀は、再び山本提督が連合艦隊司令長官を辞任する旨を表明することにより、初期の戦争計画に反するミッドウェーでの戦いを、海軍軍令部の猛反対を押し切って実行した。(第1章)
山本提督一派によるパフォーマンスのようにしか見えない戦い方だが、最初の真珠湾攻撃で意見の対立が生じたとき、山本提督を更迭するだけの力(それだけの人物)と覚悟が海軍上層部になかったということなのか。結果、日米戦争での日本の戦いは相手(米国)のリングで戦うことになり、惨憺たる負け戦になったことは史実が示す通りである。東京裁判で連合国が主張したような「戦争責任」は日本側にではなくむしろ米英中ソ側にあることは明らかだが、日本の戦争指導者には日本国民に対する「敗戦責任」がある。徴兵により悲惨な戦場に送られた多くの一般国民は、戦争の仕方を誤った指導層の犠牲者であったとしか言いようがない。筆者の田舎の隣保(隣組)は筆者の実家と四軒の小規模農家から成っているが、四軒の農家からはすべて当時の働き手が戦争に取られ、一人も帰って来なかった(筆者の実家のみ、年齢の関係で徴兵が来なかった)。かれらの立場で考えれば、戦争が終わり、農地改革による利益を与えてくれた米占領軍は、ある種の解放軍のように映ったとしても非難はできない。東京裁判史観がこの国から容易に払拭されない根底には、全国的にこうした史実が横たわっているのである。
著者は本書で、護送船団方式による輸送船団保護、潜水艦部隊による米国商船・補給船への攻撃、太平洋への陸軍投入のタイミングなど、一つ一つ詳細に日本軍の戦い方の失敗を分析しているが、その根本には「勝利病」を退け、帝国内部から外側へ向っての縦深的で効果的な国防圏を構築するという戦略が取れず、戦域を過剰拡大した戦略の失敗があったと指摘している。日本の勝利は「何もワシントンに日章旗を立てる」などということではなく、米の戦争継続の意欲を喪失せしめて和平に持ち込むことであったはずだが、現実は正反対の戦い方をしてしまった。何かその背後には目に見えない大きな力が作用していたとしか考えようがない。イギリスの生物学者であるチャールズ・ダーウィン(1809~1882)は、その著、「種の起源」で“適者生存”ということを説いているが、人間界においても短期的には「正しい者より強い者」が、長期的には「強い者より環境適応力に優れた者(適者)」が勝利する。日本の明治憲法下の政治体制は明治維新後70年近くを経て、すでに時代に合わないものとなっていたのである。現在の日本国憲法も制定後すでに60年以上を経過しているが、果たして日本人は今後、時代の変化に合わせて改正していくことができるだろうか。
「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史〈上〉1492~1901年、〈下〉1901~2006年」ハワード ジン著、レベッカ ステフォフ編著、鳥見真生訳、 あすなろ書房、2009年8月発行、各¥1,575(税込み)
著者ハワード・ジンは1922年(-2010年1月)、米国ニューヨーク州生まれの政治学者、歴史家、評論家(ボストン大学政治学科名誉教授)。公民権運動や反戦運動で活躍した。レベッカ・ステフォフは歴史・科学読物作家(ペンシルバニア大学修士)。翻訳者の鳥見真生は東北大学法学部卒。
本書は、著者の “「民衆のアメリカ史」(上巻)(下巻)(世界歴史叢書)、猿谷要監訳、明石書店、2005年1月発行、各¥8,400(税込み)”を若い世代向けに編集したものである。「純粋な事実というものは(書かれた歴史には)存在しない、ということにはすでに気づいていた。学校の教師や作家が世界にさし出すあらゆる事実の陰には、判断がある。判断とは、この事実は重要だが、こちらの事実は重要ではないから省略してもかまわない、というものだ」(下巻第14章より)。
本書においても他のアメリカ人著述家同様、日中・日米戦争やアジアの歴史に関する無知などが一部みうけられるが、通常のアメリカ通史とは異なり、民衆の立場でアメリカ合衆国の歴史を描いた、生きた人間の歴史書であると言える。著者は、「自分の過ちを正すには、わたしたち一人ひとりが、その過ちをありのままに見つめなければならない。・・・わたしの考える愛国心とは、政府のすることをなんでも無批判に受け入れることではない。民主主義の特質は、政府の言いなりになることではないのだ。国民が政府のやり方に異議を唱えられないなら、その国は全体主義の国、つまり独裁国家である・・・政府は批判の及ばない神聖な存在ではない、と『独立宣言』ははっきりとうたっているのだ。なぜなら政府とは、<生命、自由、幸福の追求>という、万人に等しく与えられた権利を保障するため、人々によってつくられた人為的なものだからである。・・・政府が責任を果たさない場合には、<その政府を改変もしくは廃止して新しい政府を設立することは・・・人々の権利である>」(はじめにより)と述べている。
現代の世界において、近隣諸国に無法なロシア、共産党一党独裁の匪賊集団-中国、ウソで固めた韓国・朝鮮のような非常識な国家群をかかえた日本のような国にとって、国家防衛のための同盟国としては、相対的によりましなアメリカ合衆国しか無いことは明らかである。にもかかわらず、多くの日本人にとって、アメリカ合衆国という国のほんとうの歴史は案外知られているようで知られていない。外面的な華やかさの陰に潜む真のアメリカ合衆国は、本書に描かれているような多くの「差別と貧困と戦争の国」(訳者あとがき)、「ここは食うか食われるかの国 強きが弱きをくじくところ」(若き黒人詩人ラングストン・ヒューズの詩の一節、下巻第三章)なのだ。世界一裕福な国の富の多くは、ごく一部の貪欲な最富裕層に独占されている。そのことは実際、アメリカ合衆国に住み、働いてみればよく分かる。一言で言えば、世界の多くの国の根源的な問題は、“共生”の思想の欠如に由来しているのだと思う。縄文時代以来、数千年を超えて“共生”の思想に支えられた日本だけが、いわば世界で特殊な環境に置かれていたのだといえる。これからの世界を生きていくうえで、わたしたち日本人はそのことをよくよく考えてみる必要がある。
一般的なアメリカ通史としては、(新版)世界各国史の中の“「アメリカ史 (世界各国史)」紀平英作 (編集) 、山川出版社、1999年10月(新版)発行、¥3,675(税込み)”などがある。
戦後史を含めたアメリカの近現代史としては、「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史」(全三巻)、オリバー・ストーン、ピーター・カズニック共著、大田直子、鍛原多惠子、梶山あゆみ、高橋璃子、吉田三知世共訳、早川書房、2013年4~6月発行、一・二巻共¥2,100、三巻目は¥2,310(税込み)が参考になる。
「日本を誤らせた国連教と憲法信者」加瀬英明著、展転社、2004年7月発行、¥2,100(税込み)
著者は評論家、史実を世界に発信する会代表。著者は本書で、日米戦争開戦10ヶ月前にアメリカは国務省の中に日本の戦後処理に関する「特別研究班」を設置していた事実を紹介している。
「交渉術」佐藤優著、文春文庫、2011年6月発行、¥705+税
著者は1960年生まれ。外交官を経て、現在、文筆家。在ロシア連邦日本国大使館に勤務後、外務本省国際情報局分析官としてインテリジェンス業務に従事した経歴を持つ。
筆者に本書の内容を評する知識も能力もないが、とにかく面白い。本書は読者に国際政治の最前線の一部を垣間見させてくれるだけでなく、人間社会の現実を鋭く描いており、過去の史実を理解する上で有効だと考え、資料室に掲載する。
著者は本書のあとがきで、ソ連崩壊のシナリオを描いたというロシアの高官、ブルブリス氏の言として、「過去の歴史をよく勉強しろ。現在、起きていること、また、近未来に起きることは、必ず過去によく似た歴史のひな形がある。それを押えておけば、情勢分析を誤ることはない」という言葉と、「人間研究を怠るな。その人間の心理をよく観察せよ。特に、嫉妬、私怨についての調査を怠るな」という言葉を紹介している。
なお著者には、“「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて」新潮文庫、2007年10月発行、¥740(税込み)”、
“「自壊する帝国」新潮文庫、2008年10月発行、¥820(税込み)”、
“「国家論-日本社会をどう強化するか」NHK BOOKS、2007年12月発行、¥1,160+税”、
“「日本国家の神髄-禁書『国体の本義』を読み解く」扶桑社、2009年12月発行、¥1,785(税込み)“、
“「インテリジェンス人間論」新潮文庫、2010年10月発行、¥740(税込み)”など、多数の著書がある。
「世界 全戦争史」松村つとむ著、エイチアンドアイ、2010年11月発売、¥15,750(税込み)
著者は陸上自衛隊出身の軍事研究家(故人)。二千数百年にわたる人類の全戦争の歴史について記述した研究書。原始仏典を読めば、人間の本質は二千数百年昔も現在も少しも変わらないことに気づかされるが、戦争の絶えることの無いのが人間世界であることを本書は事実を以って証明している。戦後の日本には、日本が軍備の増強さえしなければ戦争は起こらない、今後日本が侵略されることも無い、というような何の根拠も無い神話や空想、平和信仰が、日本を弱体化させようとする左翼や反日勢力によって意図的に広められているようですが、これほど危険なことはありません。人間という生き物は、全体としてみれば善よりも悪の要素の方が勝っている生き物です。戦争より平和の方が大切なことは議論の余地がありませんが、その大切な自国の平和を守るためには、常に戦争に備え、他国からの侵略に対する十分な警戒を怠ってはならないことを本書は暗に教えています。類書のほとんど無い大作です。
「日本は世界4位の海洋大国」山田吉彦著、講談社、2010年10月発行、¥838(+税)
著者は1962年、千葉県生れ(大学教授)。多くの日本人には「日本は資源の乏しい小さな島国」という認識が普通だと思われるが、排他的経済水域までの海洋を含めると、日本の領土・領海は広大な面積になり、各種の資源を豊富に有していることを本書は解説している。陸上交通や航空機の発達とともに、海洋に対する日本人一般の認識は嘗てに比べて弱くなっているように見えるが、単に海洋資源だけでなく、大量の物資の輸送や国防上の観点からも海洋の重要性が減少しているわけではないことを、日本人は改めて認識すべきです。
「日本は世界5位の農業大国」淺川芳裕著、講談社、2010年2月発行、¥838+税
著者は1974年、山口県生れ。月刊「農業経営者」副編集長。本書で、政府の農業政策のデタラメを暴いている。戦後、ほとんど一貫して日本国政府の農業政策は必ずしも農民のための政策でなかったことは、筆者のような農村出身者には自明のことだが、その根本には農水省を始め農業関係に寄生する集団の利益擁護の意図が存在していることが良く分かる。日本の官僚制度の悪しき側面が現れている分野の一つである。政策しだいでは日本の農業産業は、十二分に世界に伍していける成長産業であることを著者は強調している。産業構造がどのように変化しようが、食(農)が国家の礎の一つであることに変わりはない。
「「領土問題」の真実」水間政憲著、PHP研究所、2010年12月発行、¥1,600(+税)
著者は1950年、北海道生れ、近現代史研究家・ジャーナリスト。アジア極東経済委員会が尖閣諸島周辺海域に約800兆円に上ると推定される海底油田・天然ガスの埋蔵の可能性を指摘して以降、何の根拠も無く尖閣諸島の領有権を主張してきた中国の共産党独裁政府、日本の敗戦後のドサクサに勝手に李承晩ラインを設定して竹島を韓国領だと強弁してきた韓国政府(後に、竹島周辺海域にはメタンハイドレートが眠っていることが判明)、日本がポツダム宣言を受諾して戦闘行動を中止した後にも戦闘行動を継続し、「北海道・北方領土占領計画書」に沿って日本領土(南樺太・千島列島・北方4島)を侵略・不法占拠しているロシア(旧ソ連)。日本はこのような国々に取り巻かれているのが現実です。著者は多くの一次資料を駆使して、領土問題に関する彼らの捏造を本書で明らかにしている。尖閣諸島も竹島も北方領土(4島)も、日本固有の領土であることは歴史的資料から明らかです。尖閣海域でのアメリカとの石油資源の共同開発を著者は本書で提案している。
加えて著者は、靖國神社参拝問題やシナ大陸の「毒ガス兵器処理問題」にも多くの紙面を割き、偽善を通り越して中国・韓国政府以上に反日的な勢力が日本の新聞・TV、政府・政治家などに巣くっていることを告発している。
アメリカ合衆国は中国(蒋介石一派)と組んで過去に不当にも日本に戦争を仕掛けた張本人であるが、良くも悪くも民主主義の大国である。国民の意識が変われば政策の転換も早い。現在の日本の同盟国としては、前記三国に比べてはるかに相対的にマシな国家だと言える。そのアメリカ国民を動かす情報戦において、戦前、日本は(旧)ソ連と中国(蒋介石一派)に完全に敗れていたのである。その状況は現在も大して改善されていない。
「中国はなぜ尖閣を取りに来るのか」藤岡信勝、加瀬英明編、自由社、2010年12月発行、¥1,575(税込み)
尖閣諸島に関する問題をテーマに、10名の識者が尖閣諸島帰属問題の歴史的事実や中国共産党政府の意図などについて、基礎的知識の解説や対談を通して日本国民に警鐘を鳴らしている。
「ここまで違う 日本と中国―中華思想の誤解が日本を亡ぼす」加瀬英明、石平共著、自由社、2010年7月発行、¥1,575(税込み)
加瀬英明は1936年、東京生れ。石平は1962年、中国四川省生れ。共に評論家。米国の大学教育を受け、外交に造詣の深い加瀬英明と、文化大革命の共産主義独裁中国に育ち、天安門事件を経験した後来日して日本に帰化するに至った石平が、日中両国の違いについて縦横に語りつくした対談書。「相手に悪いと思う日本人」と「相手が悪いと思う中国人」-この言葉がすべてを表現している。
本書は2012年12月に、WAC BUNKOの一冊として「相手が悪いと思う中国人 相手に悪いと思う日本人」のタイトルでワックから出版・再版されている。英訳が本会の「掲載文献」欄に掲載されている。