一、 去る9月22日、鳩山首相は国連気候変動首脳会議において、CO2を2020年度までに、1990年度比で25%削減を目指すことを発表した。麻生公約は2005年比15%であるが、鳩山公約は2005年比では30%にもなる。世界の全ての主要国による参加が前提とはされているものの、一見もっともらしいこの公約ははなはだ愚かしいだけではなく、日本にとって危険なものと考えざるを得ない。
二、 そもそも、近年における気候温暖化について、これをCO2排出量の増加が主たる理由である、とするIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の主張はかなり怪しいものである。むしろ周期的な気象変動がその主因であると主張する科学者も少なくない。アラスカ大学物理学研究所長を務めた赤祖父俊一博士はその代表的な例である。事実縄文時代は現在より2度ほど平均気温が高い期間があったと推測されている。貝塚がほとんど海岸近くではなく高台に発見されていることはその有力な証拠である。現在よりかなり水位が高かったのである。大阪湾で発見された巨大なワニの化石(熱川ワニセンターに展示されている)は40万年前のものであるが、そのころは今よりかなり暖かかった証拠である。
三、 CO2排出を削減すること自体は地球環境を守る上でも結構なことである。しかし、イデオロギー色濃厚のICPCの主張を丸呑みして、負担の極度に大きい目標を掲げるのははなはだ問題である。この目標達成には、世帯あたり36万円(総額18兆円)かかるという試算があるが、その数倍はかかるという見方もある。大変な負担が国民にかかってくるということである。それだけではなく、日本の素材産業、例えば鉄鋼業などはダントツの世界一CO2排出削減を実現しているが、これにも25%の削減を迫られたりすると、日本から逃げ出さざるを得なくなる。産業空洞化のおそれが極めて高い危険性をはらんでいる。さらに達成が難しい場合に、排出権を他国から買う=支出させられるという危険性も高い。ドイツのある機関の推定では、日本はこのために1兆7千億を払うことになるだろうという。
四、 日本政府がCO2削減問題について基本的な前提として確認し、また国際的にも強調していくべきことは、現時点において日本は削減の最先進国であるという事実である。GDP当りCO2排出量は、日本を1とすると、EU1・8、アメリカ2・2、中国11・2である。日本並みになれば中国は十分の一に減らせるということである。また、火力発電の1kwhを作るのに使うエネルギーでいうと、日本1、アメリカ1・14、中国1・45。鉄1トンを作るエネルギーは日本1、EU1・1、中国1・2。セメントでは日本1、EU1・3、中国1・5、アメリカ1・8である。こうした日本の先進技術を導入してCO2削減を図ることを世界の国々に呼びかけることこそ、現実的にCO2削減は進んでいくことになる。そのための支援を打ち出すべきである。こういう日本の真の力を活用する政策を日本は考えるべきであり、自己いじめ的な愚作はやめるべきである。
(9.10)