一、 米英蘭による日本の生存を脅かす不法極まりない政治・経済的な圧迫に抗して日本が決然と立ち上がって決戦の火ぶたを切ったのが、今から六八年前の昭和一六年一二月八日である。真珠湾奇襲によりアメリカ艦隊を撃滅するとともに、マレー沖においてイギリスの誇る戦艦プリンス・オブ・ウエールズ、レパルスを航空機のみで撃沈するという世界に例を見ない大戦果をあげたのである。続いて瞬く間にフィリピン、マレー、ビルマ、インドネシアの米英蘭軍を打ち破り、東南アジアから欧米植民地勢力を駆逐したのである。
二、 この戦争を日本の侵略戦争である、などというのは話にならない愚論である。なにしろ、日本を侵略国であると断定した東京裁判の最高責任者であるマッカーサー司令官は、その後アメリカの上院軍事外交合同委員会において、「日本は自衛のために戦争に突入した」と明確に証言しているのである。しかし、自衛戦争としても、米英という圧倒的な生産力・軍事力を持つ世界の大国に刃向かうようなことは、自己の力をわきまえない無謀な戦争だったのではないか、という人がきわめて多い。
三、 しかし、日本は必ずしも負けないばかりか、勝利の戦略を持っていたのである。開戦直前の一一月一六日に大本営政府連絡会議で正式決定された「対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」がそれである。東南アジア資源地帯から米英蘭を駆逐して資源を確保した後は、太平洋は防御、攻勢主体はインド洋方面の英と中国というものである。極めて理にかなった、また実行可能な戦略である。この戦略通りにやれば、日本が敗北することはありえないと私は考えている。
四、 一年ほど前になるが、ある方からアメリカ人で似た考えを発表している人がいるよと紹介された本が今回翻訳出版した『「太平洋戦争」は無謀な戦争だったのか』(ワック出版)である。ウィリアムス大学のジェームス・ウッド教授の著書である。専門はフランス近世史であるが、このテーマで何十回と大学で講義し、学生と討論しているうちに、アメリカなどで当然のこととされている、日本は負けることが決定づけられた無謀な戦争をした、という考えはおかしいのではないかと考えるようになったという。
五、 教授によると日本は追い込まれた状況下で、考え抜かれたベストのタイミングで開戦をしたという。第一期作戦が予想をはるかに上回る成功をおさめたことがその証拠であるが、この勝利によって日本が本来考えていた作戦構想から逸脱して、太平洋で過剰な前方決戦を行って戦力を消耗してしまったことが敗戦を招いたという。こういう見方が、アメリカ人からも提起されることになったことは、あの戦争見直しのために好ましいことである。幸い本はかなり反響があるので、これをきっかけに大東亜戦争見直しの論議を深め、広めていければと考えている。
(9.12)